■旧石器時代(2002〜2003年頃?)の短歌

 キャンディのごとくしゃぶりぬ 異国〔ことくに〕の月にも似たる水の目玉を

 白薔薇の衣(きぬ)を真夏の太陽に透かしつ恋のぶらんこを漕ぐ

 青空の精のかひなに抱かれて女となれりうるはしのエマ

 恋はるるといふ贅沢な実感があふれ今宵は孤独を抱きぬ

 ごく薄きブラックコーヒーの味のごと 静かに人を想い居るかな

 白金(しろがね)と黄金(こがね)の毛並みが並び居て美しきかな 獣の親子

 吾が胸を破りて無数の痩せ腕の突き出でにけり 蠢きにけり

 モザイクのごとく亀裂の皮膚に入り砕けて散りぬ 厭わしき身よ

 毛むくじゃらの夢魔に抱かれぐずぐずと身の溶解す心地するかな

 濃き紅を唇にひき鬼のごときかほにもなりぬ 人喰ひの吾


■ジュラ期(学生時代)の短歌

 太陽の恵みを受けし干し草のかほりもすらむ 君を抱かば

 盆まへのしばし秋めく夕風に泳ぎぬ 君に恋焦がれたる

 春を待つ紅の小梅の芽のごとく恋とは言はぬ吾が心かな

 文明論記せし本の扉絵の偉人のかほに恋をせしわれ

 その煙草 君がくわへてまた吾もくわへし時ぞ燃へあがりたる

 飾り気のなさも憎らし 人夫〔づま〕の指輪に嘆くニ十ニの夏

 冬前に氷浸けたる吾が恋の溶けるも待たず君の去りゆく

 背後より君の電車の去りゆくを聞きて暑さに涙ぐみけり

 死に臨む身にはあらねど亡き恋の魂夜ごと枕辺に立つ

 俳優の汗もかぐわし 二列目の席で贔屓の姿見つめる

 月陰りまたヴァンパイア飛び来たる あはれこの身ぞ永遠〔とわ〕の屍

 ナルニアの空青々と呼びにけり ペーパーバックを並べてみれば

 金色の広野を駆けるチーターと獲物のごとき日々を送りぬ

 黒ずめる床のつやかな 遠くより白き袴ぞ踏み鳴らし来る

 立ち並ぶ出店の隅の鬼灯〔ほおずき〕に目奪われぬ かの人に似て

 背高の格子越しなる回廊にいにしへ想ふ夏祭りかな

 木漏れ日を仰いで居たり 片恋ひの痛みに笑ふわれとわが友

 「この夜をいかに過ごさむ」吾〔あ〕が問ふを合図とばかりにかほ寄せにけり

 疾く果てし人の背中に青青と匂ふ刺青うち撫でてをり

 洗面台 黒髪ひとつ残れるをつまみて想ふ ゆぶべ居た人

 同じ夜を過ごして同じ恥じらいを分かちぬ 同じ恋しさもがな

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