■2003年の短歌ドリル
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“自分らしい表現”を模索して、あれこれ試行錯誤した一年。
“エロ系”もわりと多め。
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12/20「雲」
天離る日の輪めざして昇りゆく雲竜を見き 幼きわれは
12/05「光」
来ぬ人を恨むなかれとジッポーの炎をむすぶ掌(たなごころ)かな
12/04「多忙」
ラッシュアワー手から手へ舞う釣り銭にミス・キオスクの温もりはなし
12/03「ゲーム」
引っ越しをして髪切って恋人もリロードボタンで選び直して
12/02「嵐」
思春期といふ亡霊とともに生く私はヒースクリフであつた
12/01「青いもの」
「ああこれが愛のカタチだ色なんだ」ぼくらは地球(テラ)を遥かから見る
06/16「迷」
しゃくり上げやおら駆けだし幼子は八十年の迷宮へ入る
06/14「格闘」
太古より益荒男どもの叫びあり甲骨文字のごとき蹴りかな
06/09「ほし」
干し葡萄を喰らう喰らうお婆ちゃんの肉の味する喰らう頬張る
06/07 「傾いたもの」
汗かいて歯を食いしばり筋たててピサの斜塔も下腹のアレも
注意……EDのことでは
ありません
。
未だ逢はぬわが子の宮のいたづらに傾るるを見よ妙齢の月
06/06 「見えないもの」
群青に沈む都会をモザイクに砕いてしまえ時のこぶしよ
06/05 「陽炎(かげろう・かぎろひ)」
かげろうの向こう側から「幸せ?」とゆらり手をふるわたしの死骸
06/04 「紫陽花(あじさい)」
沈黙を守り微笑を失った紫陽花よ日影の異母妹よ
06/02 「いち」
生き延びてやるわ凍土に根を張ってきみは一年草だったけど
05/31 「石」
石ころを雪のつぶてにしのばせた殺人者だった幼子のころ
05/30 「副詞・体言止め」
終点を越えて石炭燃ゆ熱くもっともっと!絶頂機関車
05/28 「ホラー」
大鍋の秘伝スゥプのトロ味増すコックの妻は里帰りして
05/27 「かがみ」
「かがみっちょ捕まえちゃるき」兄さまの声のみ留まる神隠しかな
*かがみっちょ…カマキリの異名
05/26 「梅雨」
赤と青レインコートの袖口が結ばれており梅雨の通学
05/24 「日」
吾が祖母の祖母らの骨と眠りたい葉漏れ日ささぬ世界樹のもと
*世界樹→
Click!!
05/23 「む(漢字)」
無花果(いちじく)の葉を脱ぎ捨ててじゃれあったアダムとイブはバスタブの中
05/22 「鳥の名前」
抱っこしてほしい翼の退化したキウイみたいなあたしだけれど
05/21 「流」
彗星は誕生と死を行き来する流線形のぼくのたましい
05/20 「ネット用語」
あの部屋に入ると脳でブラクラが起こる怖いわパパいやよやめて
05/19 「挨拶」
750cc(ナナハン)を吹かし刹那の春逝けり ドップラーする “ゴッドファーザー”
05/17 「愛」
顎先の愛嬌黒子をつまはじき恋人未満の羊膜を剥ぐ
05/16 「絵」
まなかぶら ほげた おとがひ 嗚呼なぜに君は君よと素描し泣けり
*まなかぶら…目の縁 *ほげた……頬骨
05/15 「朱」
残さるはダブルベッドと憎しみと朱肉の跡の乾かぬ書類
05/14 「麺類」
ひとさじのミルク垂らした煮麺のごと含みしやきみのセクスを
05/12 「動物」
水辺よりヌーのやにわに駆け出してサバンナの地に生命(いのち)轟く
05/10 「家」
玄室の今際の際の灯も絶えて王家の谷は白砂に埋もる
05/07 「五月晴れ」
五月晴れぐるり360°大地を包む陽光(ひかり)のドーム
05/06 「色の名前」
スルタンの宴前夜の気怠さや淡きキャメルの君が髪艶
05/02 「とき」
キートンとともに走ろう さあトーキー、テクニカラーのブーツ脱ぎ捨て
05/01 「間」
ニュートンの林檎ひとつが落ちる間にぼくらは何度死んだのだろう
04/30 「少年」
初陣や杵つくごとく敵の身を討ち少年の時代(とき)は終わりぬ
04/28 「木偏」
お母さんお母さぁんって赤錆びた記憶の柵を揺すって泣いて
04/26 「携帯電話」
天駆ける電磁の波の揺らぎには口ベタ人魚の想いがのって
04/25 「月偏」
床湿る熱帯雨林なキスをしてふたり脂(バター)になってしまおう
04/24 「揃う」
オールスターキャストさながらKodakに焼いたぼくらの「卒業白書」
04/23 「やわらか」
ブロックをきみの手足にくくりつけ柔き泥土(こひぢ)に沈めてやるの
*掛詞(泥土=恋路)に初挑戦。
04/22 「復活」
三度(たび)でも五度でも我が四肢切れとふヤモリ女の誓いは悲し
04/21 「手」
かみさまの息吹き流るる断崖を跳ぶんだきみの手房をとりて
04/19 「鏡」
牛頭馬頭(ごずめず)の交はりと見ゆ安宿の古鏡台に映るあやかし
04/18 「満」
ぼろタオル伸びたTシャツベランダの満艦飾に青春ぞある
04/17 「地名」
茜さす昼の新宿ぎやまんのボールの中のジオラマめいて
04/16 「酒」
言葉など届きやしない酒瓶を子宮に胎児がえりしたひと
04/15 「決」
露天風呂 酔ひて乳房をはだければ決(しゃく)れた月が顔そむけたり
04/14 「占い」
電飾は大嘘つきの星たちに「ザマ見ろ」と言う地上ののろし
04/12 「野菜」
さあウチをフォークで刺して。フルーツに負けんトマトの甘汁(つゆ)吸って。
04/11 「小説のタイトル」
己てふ獄の内より呼ばはりき 嗚呼クオ・ワディス・ドミネ? ドミネ?と
*「クオ・ワディス・ドミネ?」:ラテン語で「どこへ行かれるのですか、主よ?」の意
04/10 「気」
まみどりの稲を分け来る丘蒸気 明日へ帰ろう汽笛を鳴らし
04/09 「落ちた」
首が落ちた。腕(かいな)がもげた。脚とれた。けなげなるかな人形の恋。
04/08 「金(かね)偏」
千本の針をおなかに詰めました。ごめん、「好き」なんて嘘っぱちです。
04/07 「よう」
首すじにまとう匂いの若すぎてあんたの生き血よう吸われへん
04/05 「魚」
爪きりの刃でむしるウオノメにはたちの吾の影映りけり
04/02 「新人」
挑みては「畜生!」 悩める十七の柔きペニスを握り締めをり
04/01 「みず」
何も言はぬ 何も感じぬ 地の底の水晶樹海に生まれし我は
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